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ASOSが初の適応型ファッションライン発表、障害当事者と共創した51点を世界展開

ASOSが初の適応型ファッションライン発表、障害当事者と共創した51点を世界展開を表すイメージ画像

ニュースの概要

英ASOSは2026年、障害のある消費者向けとして初の適応型ファッションコレクション「ASOS Adaptive」を発表した。インクルーシブデザインの専門チーム・Tilting the Lensと協業し、企画段階から障害当事者がデザインに参加した点が特徴だ。磁気式のボタンやスナップ、隠しジップ、医療用チューブを通すための開口部、車椅子など着席姿勢に合わせた丈や腰回りの調整など、機能性を重視したディテールを51点に落とし込んだ。ラインナップはウィメンズ、メンズ、大きいサイズ展開のCurveを横断し、ドレスからテーラリング、普段着まで幅広くそろえ、世界各国で販売される。

引用元: ASOSが障害者向けの初の適応型ファッションラインを発売(FashionUnited)

分析・見解

初回51点という規模が物語る本気度

ASOS Adaptiveの出発点は51点という決して大きくない規模にある。ユニクロやM&Sなど大手アパレルが過去に適応服を試みた際、数点から十数点規模のカプセルコレクションにとどまり、継続展開に至らなかった例は少なくない。51点でウィメンズ・メンズ・Curveを横断し、ドレスから普段着まで網羅した点は、単発企画ではなく通常ラインに近い品ぞろえを最初から用意したことを意味する。これは「適応服は特別対応」という位置づけから「標準ラインの一部」へと踏み出す意思表示であり、他ブランドが追随する際の最低ラインを引き上げる効果を持つ。

磁気留め具とチューブ開口部が示す設計思想の転換

今回の設計で目を引くのは、磁気式の留め具や隠しジップ、医療用チューブを通すための開口部(=体に挿入した管を服の外に出すための切れ込み)といった、身体の状態に直接対応したディテールだ。従来の「おしゃれな服を大きいサイズで作る」発想とは異なり、関節が動かしにくい人や皮膚が敏感な人、カテーテルなどの医療機器を使う人の日常動作を起点に型紙を組み直している。これは健常者向けデザインへの小改良ではなく、身体機能の多様性を前提とした再設計であり、今後は他社も「後付けの配慮」ではなく企画初期段階からの設計変更を迫られることになる。

当事者共創プロセスが生む模倣されにくい強み

Tilting the Lensとの協業で重要なのは、障害当事者がアドバイザーとしてではなく共同制作者(=企画段階から意思決定に関わる立場)として関わった点だ。障害のある人向けの服づくりは、健常者のデザイナーが想像で補う形になりやすく、実際の使用感との乖離が起きやすい。当事者が試着・検証を重ねるプロセスを経ることで、磁気留め具の開閉しやすさや丈の長さといった細部の完成度が上がる。この手法は模倣が難しい。単に製品をコピーしても、設計プロセスに当事者を組み込んでいない企業は同じ使用感を再現できないためだ。

Curve横断展開が描くサイズの枠を超えた市場像

ウィメンズ・メンズ・Curveという3カテゴリーを横断させた判断も見逃せない。適応服はこれまで車椅子利用者や高齢者向けの機能服として語られがちだったが、ASOSはこれを大きいサイズ展開であるCurveとも接続し、体型やサイズの多様性と身体機能の多様性を同じ土俵で扱う姿勢を示した。ファッション市場ではサイズインクルーシブ(=幅広い体型に対応すること)がすでに一定の市場規模を獲得しており、適応服をその延長線上に位置づけることで、障害の有無にかかわらず幅広い顧客層にアプローチできる販売戦略を描いている。

ビジネスへの影響

型紙の作り直しコストをどう回収するか

適応服は型紙設計からやり直す必要があり、既存の型紙を流用できない分、開発コストは通常ラインより高くなる。ASOSが51点というまとまった点数で投入した背景には、少量生産では単価が合わず撤退に至った過去の失敗例への反省があると見られる。日本のアパレル企業がこの分野に参入する際は、数点のカプセルコレクションで終わらせず、どの価格帯・カテゴリーでなら採算が取れるかを事前に試算したうえで規模を決めることが欠かせない。

当事者参加型の開発体制を自社でどう構築するか

Tilting the Lensのような外部の専門組織と組むか、自社内に当事者モニター制度を設けるかは、ブランドの体力に応じた判断になる。中小アパレルであれば、まず既存顧客の中から障害のある利用者にヒアリングし、既存商品の改良点を洗い出すところから始める方が現実的だ。いきなり新ラインを立ち上げるより、既存の売れ筋商品に磁気ボタンや伸縮素材を一部採用するなど、小さな改修から着手するほうがリスクを抑えられる。

日本市場で先行する好機とリスク

日本では福祉用衣料の分野は存在するものの、ファッション性を前面に出した適応服はまだ少なく、先行者利益を取りやすい市場と言える。一方で、サイズ規格や体型データが海外と異なるため、海外ブランドの型紙をそのまま輸入しても日本人の体型には合わない可能性が高い。国内の医療・福祉機関や当事者団体と連携し、日本独自の採寸データを蓄積する動きを早期に始めた企業が、数年後の市場で優位に立つことになるだろう。

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