環境省のサステナブルファッション・キャンペーンが問う、服の買い方と手放し方の新常識を読み解く
ニュースの概要
環境省は、衣服の生産から廃棄までが環境に与える負荷を減らすため、特設ページとキャンペーンを通じて、消費者や事業者に行動の見直しを呼びかけている。長く着る、必要な分だけ買う、不要になった服は捨てずに譲ったりリサイクルに回したりする、といった身近な選択肢を示し、企業や自治体、学校などにも参加を促す内容だ。ファッションは暮らしに最も近い消費分野のひとつであり、環境問題を自分の行動として考えてもらいやすい。今回の取り組みは単なる啓発にとどまらない。資源循環や情報開示をめぐる産業界の議論を後押しする土台としても読むことができる。
引用元: サステナブルファッション・キャンペーン|環境省_サステナブルファッション(環境省)
分析・見解
「作りすぎ」と「着られない服」が同時に積み上がる構造
衣類は、つくる時にも手放す時にも量が膨らみやすい商品だ。環境省などが示す目安では、服を1着つくるまでに二酸化炭素が約25キログラム出て、水も約2,300リットル使われるとされる。一方で、家庭から出る衣類のうち、ごみとして処分されるのは年間50万トン前後とされ、その多くが再利用されないまま焼却や埋め立てに回る。
ただし、原因は作りすぎだけではない。買ったのに着ない服がクローゼットに眠る、という消費側の事情も大きい。眠っている服は、使われていない資源だ。環境への負荷は、つくる段階と持て余す段階の二重で生まれている。キャンペーンが買い方と手放し方の両方に触れるのは、この構造に合った整理だといえる。
啓発から行動変容へ、環境省が狙う三つの接点
これまでの呼びかけは、現状を知ってもらう段階が中心だった。今回の取り組みは、買う前に考える、長く着る、手放す時に回すという三つの場面に分けて行動を示している。環境への配慮を「気持ち」ではなく「手順」にすると、人は続けやすい。この発想は、行動科学(=人の行動のくせを使って習慣を変える考え方)に近い。
衣類は嗜好品なので、レジ袋のように有料化で一気に変えるのは難しい。だから、おしゃれを楽しみながら選べるという見せ方が欠かせない。古着、修理、レンタルを「我慢」ではなく「新しい選択肢」として描けるかどうかが、広がりを決める。
海外の規制と比べて見える、日本の自主性重視という特徴
海外と比べると、日本の特徴が見えてくる。EUは繊維製品戦略で、耐久性や修理のしやすさを求める方向を打ち出している。作り手が回収や処理にも責任を持つ仕組み(=拡大生産者責任)を、繊維にも広げようとしている。フランスは、売れ残った衣類などの廃棄を制限する法律を整えた。
これに対し、日本は法律による義務よりも、情報提供と自主的な取り組みが中心だ。企業が動きやすい反面、熱心な企業とそうでない企業の差が開きやすい。キャンペーンは、その差を埋める「空気づくり」の役割を担うことになる。
効果を左右するのは、回収した服がたどる行き先
最後に、効果を左右するのは回収した服の行き先だ。店頭に回収箱を置いても、再び服に生まれ変わる量はごく一部にとどまる。多くは海外の古着市場に送られたり、工場の拭き布や断熱材などに使われたりする。
服から服へ戻す再生は、綿とポリエステルの混紡を分けにくいなど、技術面の壁が高い。善意で出した服の行き先が見えないままだと、消費者の信頼は崩れかねない。呼びかけの次は、回収後の流れを公開する段階に入る。
ビジネスへの影響
自社の取り組みを数字で棚卸しする
アパレルや小売の担当者は、まず素材、修理、回収、再販のうち、どこまで実施しているかを書き出したい。そのうえで、回収量、修理件数、再資源化した割合など、測れる数字に置き換える。環境省の呼びかけに合わせて発信するなら、数字がなければ説得力は弱い。実態以上に環境配慮を装うグリーンウォッシュ(=見せかけの環境対応)と受け取られる危険もある。根拠のない「エコ」「地球にやさしい」といった言葉は避けたい。
今日から小さく始められる三つの実務
一つ目は、お直しや修理の受付だ。大がかりな設備がなくても、提携先を決めれば始められ、来店の理由にもなる。二つ目は、店頭回収を自治体や回収事業者と組んで行うこと。出口を確保してから告知する順番が大切だ。三つ目は、在庫と生産量の見直しである。売れ残りを減らす取り組みは、環境面だけでなく値引きによる損失の縮小にも直結する。
アパレル以外の企業も無関係ではない。制服やユニフォームを更新する際に、回収と再資源化を契約へ盛り込めば、調達部門の取り組みとして社外に示せる。
提携先を選ぶ決め手は回収後の出口にある
リサイクルや回収を掲げる事業者と組む際は、集めた服がどこへ行くのかを必ず確認したい。国内で再利用されるのか、海外へ輸出されるのか、素材として再生されるのかで、環境への効果も説明の仕方も変わる。契約前に、処理の流れと報告の頻度を文書で取り決めておくとよい。キャンペーンで関心が高まるほど、企業への目は厳しくなる。先に備えた企業ほど信頼を得やすい。